札幌の自然緑地を調べる

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具体的な調査項目は...

 さっぽろ自然調査館では札幌市の東部(厚別区・清田区)で自然緑地(残存林)の調査を行なっています。1998年度から本格的に始め、富士フィルムの助成(グリーンファンド)も得て、さまざまな角度から調査しています。ここではどんな調査をしているのか紹介してみましょう。都市の自然に関心のある方、ぜひ読んでみて下さい。

●調査している場所 札幌市の東部

 まずどんなとこで調査しているのか。調査地は札幌市の東部、厚別区と清田区に該当する地域です。下をご覧下さい。

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 この航空写真の左の方に札幌市の中心部があります。右には野幌森林公園です。ほとんど住宅である中に自然林がポツンポツンと残っています。赤いがあるのが私たちの調査地です。これらは火山灰地上に成立するコナラ・ミズナラを中心とする広葉樹林で、札幌のほかの地域では見ることができません(ササが薄いのも特徴です)。他にも魅力的な場所はありますが、まずは一つの地域に腰を落ち着けていろんなことを調べてみようということで調査をスタートしました。
 このような都市の中の孤立した緑地はよく「島」に喩えられて島生態学の分析が使われたりしますが、まさに住宅地の海に取り残された緑地となっています。調査済みの「島」は現在24緑地となりました。

●調査の目的・組み立て

 この調査の目的・コンセプトは大きく3つに分かれます。

●札幌市街地の自然林の動植物の生態の研究。
 → 札幌東部の生態系の特徴を明らかにする(コナラ−ミズナラ林)
 → 孤立化・分断化の影響を明らかにする。  
●身近な自然を市民に紹介するための情報の蓄積・教材化。
 → 定期調査・写真・イラスト・情報収集によりガイドブックを作成する。
 → 身近な自然の調査手法を市民レベルで行なうために検討する。 
●行政等の保護・利用計画への提言。

  最後のは一応ということで、とりあえずは自分たちがこの地域の自然のことをよく知るということを目標に取り組んできました。調査の中で改めて緑地の生態系が都市の中にありながら、過去の石狩平野の自然の姿を残しつつ、はぐくまれていることが見えてきます。とかく都市部では「ビオトープ」「自然復元」といった形で、自然が失われたことを前提にしてしまいがちですが、まずは残っている自然のことをよく知り、大切にしたいものです。 

 札幌市内には多くの公園がありますが、その中に自然に育った樹木が残されている「〜緑地」と呼ばれるような公園があります。このような緑地は面積が小さく、周りを住宅に取り囲まれていますが、自然の生き生きとした姿を楽しむことができる場です。これらの緑地を宅地などにしてしまわないことはもちろん、“芝生と植栽木の公園”にしてしまわないことは、少なくなりつつある里山の動植物を残すために大切なことです。
  しかし、このような小さな緑地の生態系についての詳しいことや。小面積化・分断化・質の変化の影響の評価方法は十分に確立されていません。都市計画においても緑地を残すことの意義については理解されてきていますが、どのような質・形態のものを配置していくかについては利用との兼ね合いもあり、まだまだ検討途上にあるというところでしょう。
 この調査研究では自然緑地を評価する視点として、小動物の重要な餌資源である「樹木類の果実」に注目することにしました。各樹種が生産する果実量を推定して、一定地域内に分布する自然緑地群がどの程度の果実を生産する能力を持っているのかを推定するのが一つの課題です。また野鳥・ネズミ等の小動物を調査して、彼らの生息密度を自然緑地単位で比較し、緑地の面積や分布・質との関わりを調べます。
 このような身近な自然である自然緑地の保全には、地域住民の理解が不可欠です。緑地の脅威となっているのは、利益誘導型の開発よりも、住民の意向あるいは無関心にもとづく改変が多いためです。これらの緑地の動植物は科学的貴重性があるわけではないことが多く、都市住民の身近な場に存在してこそ価値を持つものだと考えられます。その価値とは、地域住民にとっての精神的教育的価値です。市民と一緒に調査をしたり、成果をガイドブックにまとめていくこともこの調査の重要な目的なのです。

●調査の対象

  この調査では、特定の生き物ではなく、緑地の生態系を包括的に調べたいと考えています。今年は野鳥や昆虫についても手助けしていただいて調べることができ、かなり充実してきました。さまざまな動植物は相互に関係があり、一つの「系」を形作っています。何かがいなくなったり、関係がおかしくなれば、「系」全体に影響を来すことが考えられます。緑地の大きさや管理の仕方、周辺の状況などで「系」がどのように変化しているかが全体を通してのテーマとなります。
 とはいえ、調査館はもともと植物主体のため、動物の調査にはその道の人の協力を得ました。以下は共同研究者の方々です。

●小動物:宮木雅美さん(北海道環境科学研究センター)
●鳥類:道川富美子さん・佐藤ひろみさん(北海道野鳥愛護会)
●昆虫:堀 繁久さん(北海道開拓記念館)
 

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